Vol.2 第2回女子日本リーグ決勝トーナメント レポート

決勝戦「SEIBUプリンセスラビッツ」 vs 「三星ダイトーペリグリン」

●ペリグリンの強力攻撃陣をシャットアウトし、見事に日本リーグ2連覇達成

SEIBUプリンセスラビッツ 3(2−0、0−0、1−0)0 三星ダイトーペリグリン

<GOAL>
03:08 ラビッツ G21荻野 A14床(秦) 29床(亜)
09:10 ラビッツ G20久保 A22岩原 14床(秦)
51:10 ラビッツ G23中村  A16内田

女子クラブチームの頂点を決める戦いはラビッツとペリグリンという昨年のタイトルホルダー同士のマッチアップ。
ラビッツは昨年のこのリーグで初代チャンピオンに輝いているが、3月の全日本選手権ではペリグリンに敗戦し準優勝。それだけにこの試合にかける思いは強い。日本代表メンバー7人を擁する強豪、ペリグリンを相手にどれだけ戦えるのか、今シーズンこれまでの成果が試されるゲームに臨んだ。

●素晴らしい立ち上がり。勢いを呼ぶ荻野のゴール

そのビッグゲームでラビッツは素晴らしい立ち上がりを見せる。
フェイスオフ直後から雪崩を打ってアタッキングゾーンに攻め込むと、パスをつなぎ開始わずか40秒で岩原がペリグリンのGK岡田と1対1に。岩原が思い切って狙ったシュートは岡田にセーブされ最初のチャンスは決めきれなかったものの、チームに勢いを付けるには充分だった。
その直後からアタッキングゾーンに何度も攻め込み、誰かがシュートを打つとその後に必ずフォローが入ってリバウンドを叩いたり、相手より先にパックに追いついてキープしてまた攻撃に繋げるなど素晴らしい展開を繰り返す。「西武らしいスピードを見せたい」と言っていた久保の言葉通り、選手たちが氷上を走り回った。

先制点が生まれたのは開始3分だった。攻勢を続けるなかゴール前で混戦となり、床秦留可がシュートしたリバウンドはゴール正面に転がる。そのパックを最後は荻野が気持ちで押し込んだ。
「ゴール前に詰めたところで丁度リバウンドのパックが落ちてきた。GKの左足とポストの間にパック1個分の隙間を見つけたので、パックを横にしたままスライドで素早く押し込めた」と荻野。一瞬のチャンスを見逃さなかった荻野がゴール直後に腕を突き上げたとき、試合の主導権は一気にラビッツに傾いた。

●岩原が崩し、久保が仕上げ。綺麗な形を作って挙げた追加点

得点した後も素晴らしい集中力を見せるラビッツの選手達。足が良く動いて走り回り、相手よりも先にパックに追いつくシーンが目立つ。そんななか9分過ぎには追加点が生まれる。

右スポットでのフェイスオフから床秦留可がコーナーでパックをキープすると、ゴール裏の岩原へパス。ゴール真裏で相手DFとの競り合いに勝った岩原がゴール左の角度のないところからシュートすると、リバウンドがゴール正面で待っていた久保の前へ。「リバウンドは出てくると読んで準備していた」という久保はリストショットでパックを浮かせると、ゴール中央上部のネットを揺らし2−0。フェイスオフからの一連の流れで相手を崩した綺麗な形で大きな追加点を奪った。

「試合序盤の選手達の試合の入り方、集中力が素晴らしかった。特に指示を出したわけではないが、全員サボらず走れば試合のペースが奪え、おのずと得点チャンスも生まれる、ということを選手達が良く分かっていた」と八反田監督も評価する内容で、ラビッツは第1ピリオドで2点をリードして終えた。

●相手エースに仕事をさせない落ち着いたディフェンス。GKのビッグセーブも

第2ピリオドに入るとペリグリンも徐々に巻き返しを図るべく、日本代表のキャプテンでもある大沢、同じく代表の坂上、藤本が運動量を上げ、ラビッツのゾーンに攻め込もうとする。しかし、どことなく連携がかみ合わない印象。いっぽうラビッツはニュートラルゾーンでしっかりパックを持つ選手をマークし動きを制限したり、パスをカットするなど的確なディフェンスで相手の攻撃の芽を早めに摘み取る。なかでも先制点を決めた大橋-荻野-森井のセットの動きが素晴らしく、相手に良く絡んでパックを奪い取ったり、素早い逆襲からシュートまでもっていくなど、試合のペースを離さない。
またディフェンス陣も安定した守りを見せ、スロット(ゴール前正面の危険なゾーン)にパックを入れさせず、ペリグリンの平野や米山といった得点力のある選手に仕事をさせない。ときおりスロットに入ったパックもディフェンスがしっかり相手の動きを制限して強いシュートを打たせないなど、落ち着きのあるプレーで相手を乗せなかった。

第2ピリオド終了間際にはGK吉田のビッグプレーが。ラビッツのパワープレー中にカウンターから大沢が1人で抜け出しGKと1対1となるが、大沢がパックを浮かせて狙ったシュートは吉田がスティックでセーブしてこの大ピンチを脱出。決められていれば1点差に詰め寄られて第3ピリオドを迎えていただけに価値あるプレーだった。ペリグリンの永井監督が試合前「大澤が点を取ってくれれば他の子達も良い影響で乗っていける」とポイントにあげた相手の絶対的エースを止め、ラビッツは優勝にまた一歩近づいた。
このピリオドのシュート数はラビッツ17に対してペリグリンは4。数字でも試合内容の良さが伺える。

●中村の技ありゴールでだめ押し。そして頂点へ

そして迎えた第3ピリオド10分過ぎには中村がゴール裏からパックをドリブルで持ち込み、キーパーをひらりと交わして3−0。この中村の技ありシュートでとどめを刺すと、あとは試合終了のブザーを待つばかり。
歓喜の瞬間を迎え、ベンチから選手たちが両手を挙げながら飛び出すと、完封を果たしたGK吉田の元へ。帯広のリンクに選手たちの笑顔が弾け、歓声がこだました。

勝利の立役者となった荻野は試合後、自分がセンターを努める第3セットについて「みんな足も本当に良く動いていたし、一人ひとりがパックをキープできて、視野が広いというか周りがよく見えていたと思う。先取点をとることで一気に流れを引き寄せることができた」とコメント。「ペリグリンには優勝を譲りたくなかったし、前回全日本で負けたお返しができた。2冠も達成したかったので本当にうれしい」と充実した表情を見せた。

八反田監督も「足立や久保のセットがクローズアップされるが、荻野のセットがチームのために力を発揮してくれた。このセットはこれからもっと良くなる、それだけのポテンシャルがある」と活躍をたたえる。実は前日のグレッズ戦後、監督は「足立のセットでリズムを作り、久保のセットで得点が取れているが、3つめの荻野のセットの動きが素晴らしく、彼女たちが得点を取れるようだと乗ってくるのでは。期待したい」と話していた。その思惑通りの展開は指揮官にとっても嬉しいことだったろう。

ラビッツは予選・決勝を通して10連勝。最後はライバルを内容でも圧倒し、今季1つめのビッグタイトルを獲得した。
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<試合後コメント>

<SEIBU>
「ゲームベストプレーヤーに選ばれた床亜矢可選手
今季大学進学に伴いDaishinから移籍)私が入って優勝できなかったら責任重大だったのでほっとしました。ディフェンスでは難しいことをせず確実なプレーで繋げようと心がけて守った。決勝で完封できたのはチームにとっても自分にとっても本当に大きい。優勝は本当にうれしい」


足立友里恵選手
「最初の5分間しっかりしたプレーをすれば、最後まで自分たちの良いホッケーができると分かっていたので、その意識をみんなが共有していた。ゲームプランとしては3つめのセットが良い時間帯で点を取ってくれ、2点目3点目と良い形で積み重ねていけた。ペリグリンの選手はパックを持たせると怖いので、早めにプレッシャーをかけるようみんなで心がけた。昨シーズンよりも代表の活動でチームを離れる時間は多かったが、西武に戻れば気持ちをしっかり切り替えてキャプテンとして臨めたと思う」

久保英恵選手
「西武らしいスピードのあるプレーを見せられたと思う。新横浜での5カ国対抗では、外国人の早いプレッシャーに対していかにゴール前で落ち着いてプレーできるかを、相手をしっかり見極めながら色々試してみたい」

<ペリグリン>
大沢ちほ選手「1ピリで少しバタバタして、ペースをつかめないうちに失点してしまった」

< 2013.11.10 >


関谷 知生(せきやともき)プロフィール

ライターの関谷です。不定期ですが、女子ホッケー&ラビッツに関する情報をアップしていきますのでよろしくお願いします。ホッケーの魅力に惹かれたのは子どものころ。取材者としては2004年の男子アジアリーグ開幕から、女子は2006年から取材しております。個人ブログはhttp://ameblo.jp/ts-starpress/ 。編集プロダクション「スタープレス」(http://starpress.co.jp/)に所属し、雑誌やウェブに記事を寄稿しています。