TOPICS085

11〜12シーズンに向けて

SEIBUプリンセスラビッツ 監督 八反田孝行

11〜12シーズンスタート

DSC00008.jpgこのたびの東日本大震災に被災されました皆様に心よりお見舞い申し上げます。3月11日、全日本選手権の真っただ中にその激震はおとずれた。今までに感じたことのない長い揺れに、ただ事でない予感が走った。当然試合は中断して我々の試合も大幅に遅れることとなった。現在の試合が中止になるのではないか、この大会そのものが中止になるのではないかということを真っ先に心配してしまった。現実は予感をはるかに上回る悲惨なものであった。大会終了後、その甚大な被害の現状を目の当たりにし、自分たちのことだけしか考えなかったことを深く反省した。あのような状況の中でアイスホッケーができたこと、試合ができたことに対し、ご尽力いただいた関係者の方々に深く感謝したい。結果は最高のものではなかったが、普通に生活しアイスホッケーができることの幸せを実感させられた。忘れていた本当に大切なことを再認識させられた辛いながらも貴重な経験であった。

その思いを胸に刻み、5月31日チームは新たなシーズンのスタートを切った。王座奪還はもちろんだが、大好きなアイスホッケーを心ゆくまで楽しむため、キャプテン足立友里恵を中心にアシスタントキャプテン岩原知美・石川和香の3人が引っ張る新生SEIBUプリンセスラビッツの10ヶ月の戦いが始まった。

10~11シーズン総括

DSC09185.jpg私の責任において一番の反省点は、選手たちの高いモチベーションを優勝へと導いてあげられなかった点である。昨シーズンのベストゲームは中国ナショナルチームとの親善試合であった。スケジュールの関係上、コンディションも決して良かったとは言えない中、メンタル面での余裕が、良いプレー、良いゲームにつながったと思われる。勝敗にとらわれない中での中国ナショナルチームとの試合は本当に素晴らしいものであり、全日本選手権4連覇への自信を深めた試合となった。勝つこと、優勝することへのこだわりは非常に強いチームとなってきたが、逆に、勝たなければいけない、優勝しなければならないという気持ちが一歩間違えれば、試合において大きなリスクとなってしまうことをこの中国ナショナルチーム戦、全日本選手権三星ダイトーペリグリン戦で思い知らされたのであった。

DSC09518.jpgペリグリンに勝つことが優勝の絶対条件であることは選手全員がわかっていた。その強い意識が裏目に出てしまったことが残念で仕方がない。試合前のコンディショニング、メンタルコントロールの事前準備に問題はなかったと思う。3連覇中の時と全く変わらない方法でチームは大事な一戦に臨んだ。しかしながら、今大会のペリグリンは10月の練習試合の時に比べ明らかにチーム力がアップしていた。新たな選手が加わったペリグリンに対しての事前準備ができていなかったことに加え、一進一退のゲーム展開における相手チームから受ける重圧の中で、勝利への強い思いが逆に硬さ・力み・焦りにつながり、ミスを繰り返し、自滅の恰好で優勝を逃してしまった。4連覇に向けてチームのスタイル、戦うスタイルを変えぬまま戦ったリスクが出てしまった。常に更なる向上を目指し挑戦することを選択しなかったことが相手チームの変化に対応できなかった最大の原因であったと痛感する。ペリグリンとの我慢比べに負けたのは、選手たちの引き出しを増やしてあげられてなかったことと深く反省する。ケガ人やナショナルチームの活動などで思うようにいろいろなセットの組み換えをできずに固定化されたセット編成しかできなかったことや得点するための最大のポイントであるパワープレーの精度を高めることができなかったこと、オプションを増やせなかったことが、劣勢を跳ね返す力となる新たな引き出しを準備できなかったことにつながったと思われる。

DSC09448.jpgトレーナーたちは、チームを全日本選手権に向けて体力的・精神的にピークにもっていけるように最大限の努力をしてくれた。しかしながら、調子が上がらない選手や下降気味の選手、自信を失いかけている選手がいたことは事実であり、結果としてチームのバランスを崩す要因となった。3月の全日本選手権が最初で最後の大きな大会として迎える選手、ナショナルチームの一員として海外での試合を重ねてきた選手、ケガから復帰してきた選手、それぞれの立場でそれぞれのモチベーションを一つにまとめようと必死に頑張った。八戸レッズ戦、御影グレッズ戦と苦しみながらも良い方向へとチームは修正されているかと思われた。しかし、ぺリグリン戦の第2ピリオド。過去3年間幾度となくおとずれた切迫したゲーム展開。今回もこの状況を必ず乗り越えてくれると信じ、ゲーム展開を見守ったが結果は逆のものとなってしまった。現状の力関係を冷静に分析した場合、この3年間とは明らかに違う状況を全く同じ方法で勝ち切ろうとした。結果は必然的なものであった。ぎりぎりのところで持ちこたえていたものが一気にはじけてしまうかのようにミスを連発してしまった。

DSC09632.jpg久しく味わうことのなかった完敗という現実、優勝がなくなったということの現実を受け止めがたくとも、翌日には最終戦となるDaishinとの戦いが待っていた。肉体的な疲れも心配だったが、それより精神的な疲労、ショックが心配されたが、選手たちはものの見事に気持ちを切り替えて戦ってくれた。全員で声を掛け合い、全員のモチベーションを結束して戦う姿勢を氷上で思う存分表現してくれた。苦しい戦いではあったが、全員が楽しそうでいい顔をしてプレーしていたことに勝敗を超えた満足感を得ることができた。勝つこと、優勝することへのこだわりは今後も一番に追及していきたいが、同時に忘れかけていた本来のアイスホッケーの楽しさをいかに選手たちに感じさせながらプレーさせるかということの大切さを痛感させられた。

勝利すること、優勝することを目指す高いモチベーションが自分たちの良いプレーを引き出していく。その時、選手たちはアイスホッケーをプレーすることの楽しさを感じる。それがまた良いプレーを導き出す。その結果が勝利・優勝へとつながる。だが今回の大会、特にペリグリン戦においては、自分たちのモチベーションで自分たちのプレーをがんじがらめにしてしまった。勝ちたいという気持ちを高揚させれば、気持ちで負けなければ勝てると思い込んでプレーしていた選手たちは、どこか窮屈で自分たちのアイスホッケーができなかった。平常心で戦うこと、気持ちとプレーのバランスを大切にすることの必要性を深く認識させられたシーズンであった。

11~12シーズンに向けて

DSC09110.jpg新シーズンを迎えるにあたりミーティングにおいて選手たちには、個々のスキルアップ、レベルの向上にこだわってシーズンの前半は取り組んでいくことを伝えた。今まではどうしても大会や代表スケジュールに合わせて仕上がりを早くした方がよいと判断していた。当然ゲームにおいてはそれなりの内容・結果はついてきたが、個々の技術の欠点には目をつぶっていたところがあった。チームとしての仕上がりは早くなり、ピークも年内に来てしまう状態であった。それを3月まで維持し続けることは難しく、必ずしもベストのチーム状態で全日本選手権を戦っているとは言えないところがあったことは否定できない。

自分ができないこと苦手なことから目をそむけず、できないことはできるように苦手なことは得意になるように、徹底的に取り組もうということである。最終的にはFWは得点すること、DFは得点させないことのスペシャリストになることを目標に新たなチームづくりを選手・スタッフが一丸となって挑戦していきたい。FWは得点力をアップさせるためのシュート力の向上、様々なシュチエーションにおけるシュートスキルの向上を目指す。またDFはパワフルなプレー、1対1の絶対的なスキルの向上を目指す。このような目標を掲げるとFWは攻めるだけ、DFは守るだけと思われがちとなるが、合わせてチームとして全員で攻め全員で守るチームコンセプトを徹底的に追及していきたい。

新シーズンがスタートして約1カ月となるが、私自身選手たちのモチベーションがひしひしと伝わってくることを感じる。そんな選手たちとリンクで会うこと、一緒にアイスホッケーをすることがとても心地よい。昨シーズンの宿題である選手のモチベーションを個々のスキルの向上とチーム目標の達成に導くため私も選手以上に真摯にアイスホッケーに取り組みたいと思う。

<2011/6/20>